家で焙煎を始めると、味の話より先に「薄皮が散らかる」「煙い」のほうが気になってくるのではないでしょうか。ここでは、チャフ(豆の薄皮)と煙が出る理由と、減らす・逃がすための工夫、そして後片付けまでをまとめます。蓋つきの手鍋で焙煎している立場から書いています。手網を使ったときの話にも触れます。
チャフと煙が出るのはなぜか
チャフは、生豆の表面に残っているシルバースキンと呼ばれる薄皮です。焙煎が進んで豆の構造が変わるタイミング(1ハゼの前後)に多くがはがれる、という説明が一般的です。軽いので、熱の対流に乗って舞い上がります。
煙のほうは二段構えで説明されることが多いようです。序盤は豆の水分が抜けるときの、湯気に近い白っぽいもの。後半は、豆の成分やはがれたチャフが焦げて出るもの。焙煎が深くなるほど煙が増えるのは、後者の割合が大きくなるためです。
どちらもゼロにはできません。「減らす」「逃がす」「片付けやすくする」の三つに分けて考えるほうが現実的です。
その前に、毎回同じ条件で焼く

鍋が十分に熱くなってから豆を入れるようにしています。冷たい鍋から始めるより気温などの影響を受けにくく、仕上がりが安定すると感じました。
予熱そのものでチャフが減るわけではありません。ただ、毎回同じ条件で焼いていると「今日はやけに皮が飛ぶ」「煙が出るのが早い」という違いに気づけます。減らす工夫の前に、比べられる状態を作っておく、という順番です。
焙煎が終わったらザルに空けます。ザルに残るのは豆のほうで、チャフは小さいので網目から下へ落ちていきます。豆とチャフを分ける作業を、冷ますのと同時にやっている形です。

チャフを減らす・散らかさない
一度に焼く量は、慣れに合わせて決める
私の場合、始めたころは100gでした。いまは安定して焼けるのが最大で200gくらいまで増えて、いちばん安定するのが150gなので、普段はこの量にしています。100〜200gの間を、その日の条件で動かしている感じです。
散らかりという点で言うと、量が増えればチャフの量もそのぶん増えるので、蓋を開け閉めするたびに飛び出す量が増えます。鍋を激しく振ったときに蓋がずれてチャフが出ることも無くはないのですが、こちらはまれです。散らかりを抑えたいなら、まず一度に焼く量を見直すのが早道だと思います。
ですので、始めたばかりならまずは100g程度から。散らかりが少ないうえ、鍋の中の様子も見やすいです。扱いに慣れてきたら少しずつ増やして、自分が安定させられる量を見つけていくのがよいと思います。量が変われば火加減も時間も変わるので、増やすのは一段ずつのほうが読みやすくなります。
手網を使うなら屋外で。チャフに火がつきます
手網は豆が直接空気にさらされるぶん、チャフが周囲に飛び散りやすい器具です。煙は網目から抜けてこもりにくい、という利点はあります。
ただ、私も一度使ってみて驚いたことがあります。網の中に直接火が当たるので、チャフに火がついた状態で舞い上がったのです。1メートル以上は上がっていたと思います。屋外でやっていたので何事もありませんでしたが、室内だったらと思うと落ち着きません。
ですので、手網を使うなら屋外をおすすめします。コンロ周りに新聞紙やアルミホイルを敷いて養生する、という方法を見かけることがありますが、火のついたチャフが落ちてくる前提で考えると、燃えるものを敷くのは避けたほうがよいと思います。
仕上がりについても、手鍋に比べて豆が焦げやすく、火力の調整も難しいと感じました。チャフと煙を減らしたいという目的なら、蓋のある手鍋のほうが扱いやすいというのが、使ってみての実感です。
「生豆を洗う」は賛否が分かれる
焙煎前に生豆を水洗いすると薄皮やほこりが先に落ちる、と紹介されることがあります。一方で、チャフは焙煎中に自然に外れるので洗う必要はなく、むしろ豆が水分を含んで外は焦げ・中は生焼けになりやすい、という指摘もあります。当店ではやっていません。試すなら、水気の拭き取りまで含めて毎回同じ手順にしておくほうが、仕上がりを比べやすくなります。
煙は「出さない」より「逃がす」
換気扇の真下で焙煎する、窓を開けて風の通り道を作る。煙そのものより室内に匂いが残るほうが気になりやすいので、排気側の換気扇だけでなく、給気側の窓も開けておくとよいと言われています。
もっとも、当店でやっているのはコンロの換気扇を回すことだけです。蓋つきの手鍋で一度に150g程度、という条件なら、いまのところこれで足りています。
1ハゼが終わるころから蓋を開け閉めする
手鍋焙煎でいちばんお伝えしたいのがここです。1ハゼが終わるあたりから、鍋の蓋を開けたり閉めたりしています。
蓋を閉じたままだと温度が高くなりすぎて、焙煎が早く進みすぎます。さらに、こもった煙で豆に燻されたような香りがついてしまうことがあるので、適度な排煙が要ります。かといって開けっぱなしでは温度が落ちるので、2〜3秒おきに開け閉めするくらいの短い間隔になります。蓋つきの器具は温度を保ちやすい反面、煙の逃げ場がない。その裏返しです。
煙が出ること自体は失敗のサインではない
焙煎が進めば煙は出るものです。むしろ煙の量や色、そしてハゼの音が、今どのあたりまで進んでいるかを教えてくれます。1ハゼの音は、思っていたより小さいと感じました。派手に鳴るのを期待していると聞き逃すので、静かな環境で鍋に耳を近づけてみてください。
注意したいのは、煙が急に白く濃くなったときと、焦げ臭くなったときです。温度が上がりすぎているサインと言われています。火を弱めるか、一度火から外して様子を見ます。

焙煎後の片付けと、火の始末
ザルに移したあとも余熱で焙煎は進みます。狙った焙煎度で止めたいなら、うちわや扇風機で手早く冷ましてください。
そして安全面で必ず覚えておきたいのがチャフです。軽くて乾いた皮は火がつきやすいので、火事に注意してください。 冷ます作業はコンロから離れた場所で行い、飛んだ皮はその都度まとめておくと安心です。
当店の片付けはあっけなくて、焙煎が終わったあとに掃除機で吸い取るだけです。手鍋なら飛び散る範囲がかぎられるので、これでだいたい片づきます。ただし火種が残っていないことを確かめてからにしてください。
あると助かる道具
当店で実際に使っているものを並べてみます。焙煎用の手鍋。チャフを取るためのザルは、じつは園芸用で、砂利を大きさで仕分けるためのものです。目が大きいので、焙煎した豆からチャフを落とすのにちょうどよく使えています。冷ますための団扇。それから、手鍋に挿せるプローブのついた温度計。これはパソコンに繋いで、焙煎中の温度変化を見るために使っています。
ごらんのとおり、焙煎専用品はほとんどありません。ザルが園芸用品売り場のものだと聞くと意外かもしれませんが、用が足りるなら何でも構わないと思います。
まとめ:焙煎のあとは、淹れ方まで整えて
ポイントは四つ。毎回同じ条件で焼く。一度に焼く量は慣れに合わせて決める(始めは100g程度から)。1ハゼが終わるころから蓋を開け閉めして排煙する。終わったら手早く冷まし、皮の火の始末に気をつける。特別な焙煎機を買い足さなくても、家にあるもので今日から試せます。
焙煎の手順そのものは自家焙煎コーヒーの始め方:初心者でも失敗しない自家焙煎のステップにまとめています。
上手に焼けても、淹れ方が乱れると味は分かりにくくなります。当店では湯温85℃、粉とお湯の比率は1:15、蒸らしは30秒〜1分が目安。お湯は細口のポットでゆっくり注ぐと味がぶれにくいようです。詳しい手順は淹れ方のページに。「焙煎までは手が回らないけれど、丁寧に焼いた豆で試したい」という方はオンラインショップものぞいてみてください。
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