「2050年にはコーヒーが飲めなくなるらしい」という話を聞いて、最近の豆の値上がりと重ねて不安になった方もいると思います。
この記事では、元になった研究と国際コーヒー機関(ICO)の資料をたどり、「将来の予測」と「いまの値上がり」を分けて整理します。
まず結論:コーヒー2050年問題は本当?
- 予測としては実在します。 2015年に発表された研究で、気候変動により、コーヒーの栽培に向いた土地(栽培適地)が世界全体でおよそ半分に減るという計算結果が出ています
- ある年に突然飲めなくなる、という話ではありません。 気候の変化に合わせて進む「見通し」です
- いまの値上がりとは、時間の長さがまったく違う話です
- 家で飲む人が慌てて何かを変える必要はありません。 できるのは、豆を無駄なく使うことくらいです
根拠になった研究は?「適地が約半分」の中身
よく根拠に挙がるのが、Bunn(バン)さんたちの論文「A bitter cup」(学術誌『Climatic Change』、2015年)です。
論文の要旨によると、温室効果ガスの排出シナリオを複数試したどの場合でも、コーヒーの栽培適地は世界全体でおよそ50%減るという結果でした。減り方が大きいのは赤道に近く、標高の低い産地で、大産地のブラジルとベトナムでも大きく減るとされています。
種ごとの違いも書かれています。アラビカ種は高温で収量が下がること、暑さに強いと思われがちなロブスタ種は栽培の季節の中で気温のばらつきが大きくなることが、影響として挙げられています。
一方で、東アフリカやアジアの一部では、逆に適地が増える可能性も示されています。ただ、その多くは森林で、対策が難しくなりうることも指摘されています。
この予測は、1本の論文だけの話ではありません。スイスの別の研究チーム(Grüter(グリューター)さんたち、学術誌『PLOS ONE』、2022年)も、気候と土の条件から2050年の栽培適地を計算しています。調べた3つの作物(コーヒー・カシューナッツ・アボカド)の中でコーヒーがもっとも影響を受けやすく、主な産地のすべてで悪い影響が上回るという結果でした。
分からなかったことも書いておきます。
- 要旨には、何年の時点の予測かまでは書かれていませんでした。本文は有料で、今回は読めていません
- 「2050年問題」という呼び名がどこから広まったのか、はっきりした根拠は見つけられませんでした
- ネットでよく見る「アラビカ種75%減・ロブスタ種63%減」という数字も、確かな出どころが見つからなかったので使いません
野生のコーヒーも減っている?キュー王立植物園の2019年の研究
もう1つよく出てくるのが、イギリスのキュー王立植物園のDavis(デイビス)さんたちが2019年に『Science Advances』に出した論文です。
野生のコーヒー124種すべてを国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの基準で評価したところ、75種(約6割)に絶滅のおそれがありました。内訳は、深刻な危機13種・危機40種・危急22種。主な原因は森林の減少で、気候変動も重なる圧力として挙げられています。
この論文では、野生のアラビカ種も絶滅危惧(危機)に分類されています。野生のアラビカ種が自生しているのはエチオピアと南スーダンです。
畑のコーヒーがすぐに消える、という話ではありません。野生種は将来の品種改良の元になる「遺伝資源」で、それが減ると選べる道が減る、という意味で大事な研究です。
いまの値上がりは2050年問題のせい?
ICOの月報(2025年2月号)によると、2025年2月の国際的な生豆の指標価格(I-CIP・米ドル建て)は、月平均として記録上もっとも高い水準になり、1977年3月の最高値を超えました。前の年の同じ月と比べて94.6%高、ほぼ2倍です。
この高値の理由までは、確かな資料で確かめられませんでした。ただ、ここ1〜2年の価格の動きと、気候の変化とともに長い時間をかけて進むと予測されている適地の減少は、時間の長さがまったく違います。ひとまとめにしないほうが、落ち着いて考えられます。
家で毎日飲む人は何か変えるべき?
慌てて買いだめする必要はない、と私は思います。できるのは、手元の豆を無駄なく使うことです。
私は以前、だいたい10gが測れる計量スプーンで粉を測ったことがありますが、実際は8〜12gくらいの幅でばらつきました。豆の種類や、豆か粉かでも結果が大きく変わる印象です。いまは0.1g単位で測れて、タイマーもついたコーヒースケールを使っています。
量りでそろえると、毎回の味がそろい、1袋で何回淹れられるかも分かります。当店のレシピの例は「粉10gにお湯150g」(粉1:お湯15)なので、計算上は100gの袋で10回分。次に買う量の目安になります。
湯温85℃・蒸らし30秒〜1分など、当店の淹れ方は淹れ方ページに、スプーンから量りへの切り替え方はコーヒー豆が値上がりしても無駄なく淹れる|スプーンをやめて量りで粉の量をそろえる淹れ方にまとめています。
研究に出てきた産地を、自分の1杯で
ニュースに出てくる産地は、いつもの豆とつながっていることがあります。
- 窓辺。:エチオピア イルガチェフェ(中煎り)。野生のアラビカ種が自生する国で育てられた豆です(畑で育てた豆で、野生種そのものではありません)
- おかえり。:ブラジル+ケニアのブレンド(中深煎り)。ブラジルは、Bunnさんたちの論文で適地が大きく減るとされた大産地です
怖がるためではなく、「この豆はあの国から来ている」と知って飲むと、遠いニュースが少し身近になります。
まず1つ試すなら、4種 飲み比べセット(ドリップパック)がおすすめです。道具がなくてもお湯を注ぐだけで、窓辺。とおかえり。を含む4種を飲み比べられます。→ 各種ドリップパック
豆で選びたい方はオンラインショップへ。当店はご注文をいただいてから焙煎しています。
参考にした資料
- Bunn, C., Läderach, P., Ovalle Rivera, O., Kirschke, D. (2015) “A bitter cup: climate change profile of global production of Arabica and Robusta coffee”, Climatic Change 129(1), 89–101. DOI: 10.1007/s10584-014-1306-x(書誌情報)
- Davis, A. P., Chadburn, H., Moat, J., O’Sullivan, R., Hargreaves, S., Nic Lughadha, E. (2019) “High extinction risk for wild coffee species and implications for coffee sector sustainability”, Science Advances 5(1), eaav3473.(本文)
- Grüter, R., Trachsel, T., Laube, P., Jaisli, I. (2022) “Expected global suitability of coffee, cashew and avocado due to climate change”, PLOS ONE 17(1), e0261976.(本文)
- International Coffee Organization, Coffee Market Report – February 2025.(PDF)

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