コーヒーの湯温はどこで測る?ケトル・ポット・粉の上で温度は違う
レシピに「湯温90℃」「85℃で」と書いてあっても、どこで測った温度かまで書いていないものは多いです。家でハンドドリップをすると、お湯はケトルの中→注ぐポットの中→粉の上と移っていき、そのたびに少しずつ冷めます。同じ「90℃」でも、どこで測ったかで実際の温度は変わってしまうんです。
基準は「最初に湯が粉に触れるとき」
堀口俊英さんの『コーヒー抽出の科学』(新星出版社, 2026)では、湯温は最初に湯を注いで粉に触れるときの温度で考える、としています(p.84)。湯沸かしポット・注ぐポット・粉の上では温度がそれぞれ違うためで、本に出てくる抽出温度はすべてこの基準です。
この前提で読むと、本の数字も比べやすくなります。たとえば豆どうしを比べるための基準の淹れ方は、コーノのドリッパーで粉25gに90〜95℃の湯を注ぎ、2分30秒で240ml落とすもの(p.135・136)。深煎りのフレンチローストは、粉20g・240mlを180秒前後で、苦みや重さが出すぎないよう90℃前後にする、とあります(p.155)。どれも「粉に触れるときの温度」です。理屈や実験は、ぜひ本で読んでみてください。

家で測るなら、注ぐ直前のポットの中
とはいえ、粉に触れる瞬間の温度を家で毎回測るのは現実的ではありません。私は、注ぐ直前のポットの中を測って、その代わりにするのがいちばん手軽だと考えています。
私はやかんで沸かすときは、青い細口ポットに移してから注いでいます。この流れだと、やかんで沸いた温度とポットの中の温度は別物です。10月からは、温度が大事な実験には注ぎ口の細い電気ケトル(エペイオス)を使っていて、こちらはポットに移さず、そのまま注いでいます。
ただし、ポットの温度はあくまで代わりの目安です。お湯は細い流れになって粉に落ちるまでの間にも空気に触れるので、粉に触れるときの温度はポットの中より少し低いはず、と私は考えています。何℃違うかを示した確かな資料は見つけられませんでした。
移し替えで何℃下がるかも、ポットの素材や大きさ、お湯の量、室温で変わります。一度だけ自分の道具で確かめておくと、次から迷いません。
- いつもの量のお湯をケトルで沸かし、温度を測る
- ポットに移して、すぐ温度を測る
- 差をメモしておく
私が一度測ったときは、室温20℃くらいの日で、沸かしたお湯が93℃。青い細口ポットに500mlほど移してから測ると、2〜3℃くらい下がる印象でした。わずかな差に見えますが、85℃と90℃を比べるときには無視できない幅です。
なお、温度計付きのポットや温度を設定できる電気ケトルは、表示がどこの温度を指すかが機種によって違います。取扱説明書で一度確かめておくと安心です。

温度計が無いときは「移して冷ます」
当店の淹れ方のレシピには、温度計が無い場合について次のように書いています。
- 沸騰した直後のお湯は使わない
- 少しお湯を冷ますと、過度な苦味が抑えられる
- 沸騰したお湯を別の容器に移すと冷ましやすい
つまり当店にとって、細口ポットへの移し替えは測るときの邪魔ではなく、ねらって冷ます手順でもあります。ヤカンなどから直接注ぐとお湯の勢いが強くなりすぎて味が安定しないので、細口ポットはもともとおすすめしています。移すひと手間で、注ぎやすさと温度の両方が整うわけです。
当店の85℃と、本の90℃
当店がお客様におすすめしているのは85℃・粉:湯=1:15です。正直に言うと、これは「実験の結果たどり着いた数字」ではありません。noteで深煎りの豆(コメダのオリジナルブレンド深煎り)を使い、83/88/95℃の低・中・高の3段階で味の傾向を確かめ、それを踏まえて飲む人にとってキリのよい85℃にしました。1:15は一般的な値をそのまま採用しています。
そして、当店のレシピにも、85℃をどこで測るかまでは書いていませんでした。家で合わせるなら、上で書いたとおり、ポットに移したあとで測るのがおすすめです。
一方、店主の私が堀口さんの本の淹れ方を試したときは、4種類とも90℃で抽出しました。本の淹れ方は湯温だけでなく、粉の量・注ぎ方・時間も焙煎度ごとに違います(p.147〜157)。比べた結果は本の淹れ方といつもの淹れ方を4種の豆で比べてみたにまとめています。
このときの90℃は、エペイオスの電気ケトルで測った温度です。このケトルは注ぎ口が細いので、ポットに移さず、そのまま粉に注ぎました。本の基準(粉に触れるときの温度)とは測った場所が違うので、厳密には同じ90℃ではありません。
どちらかが正しいという話ではありません。大事なのは、85℃と90℃を比べるなら、測る地点をそろえること。ケトルで測った90℃とポットで測った85℃を比べても、本当の差は分かりません。苦みが強すぎると感じたときの調整は、深煎りが苦い・えぐい時の調整法も参考にしてください。
測り方をそろえて、4種を飲み比べる
測る地点が決まったら、湯温だけを数℃ずつ変えてみると、味の違いが自分の舌で分かりやすくなります。豆を変えるときも同じで、測り方がそろっていれば、変わったのは豆だけです。
当店の豆は、窓辺。/午後三時。/おかえり。/おやすみ前。の4種類。まず手軽に試すなら、4種がそろうドリップパックの飲み比べセットがおすすめです。1袋12gにお湯180mlで、粉:湯はちょうど1:15。同じポット・同じ温度で淹れれば、4種の違いをそのまま比べられます。
豆はオンラインショップで、ご注文をいただいてから焙煎しています。淹れ方の手順は淹れ方ページにもまとめているので、あわせてどうぞ。
参考にした資料
- 堀口俊英『コーヒー抽出の科学』(新星出版社, 2026)p.84(湯温を測る基準)、p.135・136(基準の淹れ方)、p.147〜157(焙煎度ごとの淹れ方)、p.155(フレンチローストの湯温)
- Snowman Coffee Roasters「淹れ方のレシピ」(当店の淹れ方メモ)

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