深煎りでお湯が落ちにくいのは、失敗とは限りません
深煎りの豆を淹れていて「なかなか落ちない……詰まってる?」と不安になったことはありませんか。
先に結論です。堀口俊英さんの『コーヒー抽出の科学』の実測では、焙煎が深いほどお湯が落ちにくくなっていました。遅いだけで「失敗」と決めなくて大丈夫です。この記事では、本の実測と、当店の淹れ方(湯温85℃・粉:湯=1:15)で家で試した数字を物差しにします。
本の実測:深いほど、最初の1滴も150mlまでも遅い
同書の実測では(p.162)、最初の1滴が落ちるまでがミディアム15秒に対してフレンチ45秒と、焙煎が深いほど遅くなっていました。150mlまでの時間も同じく、深いほど長くかかっています。
ここで受け取ってほしいのは「深いほど遅い」という傾向だけです。後で紹介する同書の抽出時間の目安とは量と時間の関係が合わず、条件が違うと考えられるので、時間の物差しには使いません。
なぜ遅くなる?「成分は出やすいが、湯は通りにくい」
同書は深煎りをこうまとめています(p.162〜163)。焙煎で細胞が壊れて成分は溶け出しやすくなる一方、もろくなった豆から出る細かい粉(微粉)が粉の層を詰まらせる、という説明です。
なお「落ちが遅い=濃く出る」とは限りません。同じ豆を焙煎度違いで淹れた実験では、濃さ(Brix)はミディアム2.2からフレンチ1.7へと、深いほど下がりました(タンザニア産・各20g・湯温93℃±2℃、p.158・p.161)。
抽出時間の目安:どこまでなら遅くても大丈夫か
同書の焙煎度別の抽出のポイントでは、粉20gで240mlを、ミディアムは120秒以内(p.147)、シティは150秒前後(p.151)、フレンチは180秒前後・90℃前後(p.155)。ただし基準抽出は粉25g(p.135〜136)で、深いほど粉を増やす考え方も載っています(p.166)。
当店の淹れ方は湯温も比率も本と違うので、家で試した数字を2つ挙げます。
- 午後三時。(コスタリカ・中深煎り)で蒸らしを比べたときは、ハリオV60・中細挽き・15g・85℃・1:15で総抽出時間を2分30秒にそろえました(蒸らしは30秒がいちばん良く、60秒は酸味が突出)
- note に書いた深煎りの実験(コメダのオリジナルブレンド)では、抽出時間を3分30秒にしたとき謎の不快感が出ました
豆も条件も違うので証明にはなりませんが、当店の淹れ方なら総抽出2分30秒前後は普通の範囲、3分を大きく超えて苦い・えぐいなら見直す、くらいの目安にしてみてください。
あわせて見たいのが粉の面です。同書は、淹れ終わりに粉の面が大きくへこまず平らなのを目安にしています(p.137)。粉の一部だけが出すぎていないかを確かめるためです(p.140〜141)。本の淹れ方での目安なので当店の淹れ方にそのまま当てはまるとは限りませんが、粉の偏りを見る手がかりにはなりそうです。
色はあてにしないこと。note の実験では、深煎りは液の色を見ても出しすぎかどうか判断できませんでした。
極端に遅いとき、まず見直すこと:注ぎ方と挽き目
注ぎ方:出しすぎを防ぐ
同書のシティローストの手順では、20mlずつ区切って円を描くように注ぎ、粉をなるべく膨らませません(p.152〜153)。これは落ちを速くするためではなく、粉の一部だけが出すぎるのを防ぐための注ぎ方です(p.140〜141)。湯をまっすぐ落とせる細口ポットが要る、とも書かれています(p.137)。
挽き目:細かくしすぎていないか
note の実験で挽き目を変えたときは、極細挽き(目盛り1)はとろみがあり苦みが前に出て後味も長め、中挽き(目盛り5)は飲みやすいけれど印象が残らず、粗挽き(目盛り7)は日本茶に近い渋みと薄さ。いちばん良かったのは細挽き(目盛り3)でした。
味を比べた実験なので、落ちる速さとの関係までは分かりません。それでも本の「微粉が詰まらせる」という説明と、家で試した「細かくしすぎると苦みが前に出た」は、挽き目を確かめる理由になります。

フィルター:替えたら抜けが早い気がした
CAFECの中深煎り用(90℃対応)ペーパーを、これまでのAmazonのフィルターとフラワードリッパーで使い比べたら、飲み味はややすっきり、お湯の抜けも早い気がしました。家で使い比べた印象で、何が違うのか、抜けの早さが味に影響したのかは確かめていません。
苦い・えぐいときの調整は、深煎りが苦い・えぐい時の調整法:湯温・抽出時間・挽き目・注ぎ方を実験で比較したにまとめています。
当店の豆に当てはめると
窓辺。(エチオピア)は中煎り、午後三時。・おかえり。・おやすみ前。は中深煎りです。本のミディアム・シティ・フレンチのどれに当たるかは言えません。中深煎りの3種は窓辺。より落ちがゆっくりになりそうですが、店主はふだん抽出時間を計りながら淹れていて、この3種で特別に遅いと感じたことはありません。
当店は注文を受けてから焙煎するので、届いたばかりの豆は新しい状態です。同書は、新鮮で深めの焙煎の豆は粉が膨らみすぎないよう湯の量を細かく調整する、としています(p.137)。最初の数投は少なめに注いでみてください。
4種ともオンラインショップで100gから購入できます。「朝は窓辺。、夜はおやすみ前。」のように、暮らしの場面で選んでもらえたらうれしいです。
まとめ:遅さは想定内。2分30秒前後を目安に、味で確かめる
- 本の実測では、焙煎が深いほどお湯が落ちにくかった。遅いだけで失敗ではない
- 理由は「成分は出やすいが、湯は通りにくい」(微粉が粉の層を詰まらせる)
- 当店の淹れ方なら総抽出2分30秒前後が目安。3分を大きく超えて苦い・えぐいなら、注ぎ方と挽き目を見直す(家で試した範囲の目安)
- 時間だけでなく、粉の面と味でも確かめる
ドリップパックが「薄い」ときはドリップパックが薄いのはなぜ?症状から原因を見分けて、マグとお湯だけで濃く淹れるコツもどうぞ。当店のおすすめの淹れ方(85℃・1:15・蒸らし30秒〜1分)は淹れ方ページにまとめています。
参考にした資料
- 堀口俊英『コーヒー抽出の科学』(新星出版社, 2026)p.135〜137、p.140〜141、p.147、p.151〜153、p.155、p.158、p.161〜163、p.166

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